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Dr.イワサキ

Dr.イワサキプロフィール
岩崎輝雄(いわさき・てるお)

1933年島根県松江市生まれ。協会監事・学術部会代表幹事/北海道大学 健康・予防医学 教育学博士/健康評論家。
温泉健康法として「クアハウス」、森の健康法として「森林浴」を発案、企画・運営指導に携わる。その間、一貫して厚生省、農水省、環境省の補完事業を担当。レジオネラ菌対策、シックハウス対策にも係わっている。
著書に「温泉と健康」(厚生科学研究所)、「クアハウスの健康学」(総合ユニコム社)、「森林の健康学」(日本森林技術協会)などがある。

Dr.イワサキの今月の水のお話し
協会のご意見番「Dr.イワサキ」こと岩﨑教授が、ちょっと気になること、不思議に思うこと、愉快な出来事などなど、毎月楽しい内容をお話ししていきます。

Vol.10◆科学で痛めつけられた水に 天然素材の浄化で恩返しを

 今、水周辺の異変が目立つ。我々は口に入れる健康づくりの水/水洗、洗車など暮らしの水/河原、プールなど遊びの水という三大恩恵を受けている。
 異変の一つは飲む水にあり、水道からペットボトル、そして最近の“ウォーターサーバー”の家庭・職場・各種会場の大量・拠点飲用設備の登場だ。使いまわし方式のツーウェイ、使いきりのワンウェイで業界情報では全国での契約箇所数約100万台で、全世帯換算で10%に肉薄しているという。不味いとされる硬水地域の欧州における普及傾向から1000~1500万台を業界では期待している。現在ワンウェイ方式が主流を占めるこの業界でも要注意分野だ。
 異変の二つ目はヒトに対する土壌菌等有害微生物のレジオネラ属菌の強力な浸透ぶりだ。レジオネラ属菌による発症は新型インフルエンザ予防で外出を差し控えた国民の行動で、平穏に見えるが、感染死亡事故件数はそれでも昨年を上回る傾向にある。特に、問題は予防現場で、温泉旅館、一般家庭等での同菌の発症報告にやはりそのレジオネラ属菌発生現場としての認定基準(10CFU/100ml未満)の境界域の認識だ。本来細菌学会でも進化菌対象に発生菌個数での基準化は馴染まないとの消極的な論議が背景にあるが、“1個でヒトを殺す”菌も、“5万個”でも無害の時もあるこの菌の特徴に本来複雑な要素がある。要は、スピーディで精緻な測定装置が有ったとしても、この発生現象の多い5~9個など“疑わしきグレーゾーンの警戒警報”に対するやさしい告知方法が必要だ。問題は殺菌消毒処置で事件は終わるのでなく、本来本当の病巣はその菌を寄生させているアメーバの存在であり、この駆除に適応する薬剤と方法は未だに業界には存在していない。つまり安価で強い効果のある塩素殺菌は有効ではあるが、トリハロメタンなどの発生や、アルカリ性温泉での殺菌力に効力はないどころか、温泉の泉質に悪影響ありとの関係生命学会の指摘もあり、厚生労働省も認識している。今私はアルカリ性の環境下でも殺菌力があり、廃水処理に問題の無い薬剤事例として、“大豆脂肪酸”の提示があり検討中だ。各種の貝類、大豆、さんご礁等天然素材をアメリカの友人からも寄せられ、目下実証実験中だ。
 暮らしに欠かせない安心で安全な水確保にはデカルトばりの“科学の侵害”的発想でなく、天然素材での浄化が基本だ。
 それはともかく、ようやく春らしくなったこの季節、5月の「皐月」は、田植をする月である「早苗月(さなへつき)」と言っていたのが短くなったものであるという説が有るが、小生も田植えならぬ畑仕事に精を出し新緑を愛でようか思う今日この頃である。
 では、また。                  

(1005-010)